沖縄ウェディング プロデュース 「Love Baile(ラブバイレ)」

過去の公演から 4 マニュエル・ルグリの新しき世界(Aプロ)

2010.11.09

マニュエル・ルグリの新しき世界公演カタログより

 2010年の2月にゆうぽうとホールで行われたバレエ公演「マニュエル・ルグリの新しき世界」。そのAプロ「ルグリ×バナ×東京バレエ団 スーパーコラボレーション」とBプロ「ルグリと輝ける世界のスターたち」を見てきました。マニュエル・ルグリは前回のブログでも紹介したように、私が3年前に沖縄に招聘したバレエダンサー。そのカリスマ性と他を圧倒する存在感、技術力、演技力は、生きる伝説といわれ、同じ時代を生きることが出来ることをバレエファンはみんな最高の幸運と思っているような人です。

 その世界的男性バレエダンサーであるマニュエル・ルグリの世界初演の演目がAプロにて2月4日(木)に上演され、マニュエル・ルグリとパリ・オペラ座バレエ団時代に至極のパートナーシップで一時代を築いたこちらもバレエ界始まって以来のダンサーといわれるシルヴィ・ギエムとの共演が話題となった演目がBプロにて2月6日(土)に行われました。

マニュエル・ルグリのソロ

 Aプロでは、マニュエル・ルグリのソロである「ザ・ピクチャー・オブ…」が上演。

 パトリック・ド・バナによってマニュエル・ルグリのために振りつけられ2008年東京で初演された演目。鯨の鳴き声に始まり、パーセルのオペラ「ディドとエアネス」より終幕のアリア「私が地に横たわるとき」にのせて、重厚で静謐な空間を描き出す。パリ・オペラ座を退団し、新たな一歩を踏み出したマニュエル・ルグリ自身のポートレートともいうべき作品。第12回世界バレエフェスでもマニュエル・ルグリによって踊られた東京に縁の深い作品です。

 「光と影の肖像、時と空間の美しさの肖像、やってくるものの肖像、去りゆくものの肖像、そして……自分自身の肖像!」(「ザ・ピクチャー・オブ…」プログラム・ノートより)

 舞台セットも何もない、ただ一人人間の肉体と精神の限界までを使った踊りは、踊りを超えた彼自身のストイックなまでの生きざまを感じさせてくれました。頂点にのぼりつめ、そこに君臨し続けるには、並みの努力ではない、そしてそれを努力とも思っていないその精神こそが天才たるゆえんなのかもしれない。全身から発するエネルギーが会場中を包み、全幕ものの公演とは違う、ガラ・コンだからこその世界観がそこにはあります。コンテンポラリー・バレエ特有の抽象的な世界はそこにいるダンサーの本質が伝わり、マニュエル・ルグリのすごさがその5分の演目からひしひしと伝わってきました。

ホワイト・シャドウリハーサル風景。パトリック・ド・バナと一緒に

 そして、休憩をはさんで、今回のプログラムの目玉である世界初演の「ホワイト・シャドウ」。新進気鋭の振付家であるパトリック・ド・バナとともに、東京バレエ団とのスーパーコラボが実現。北アフリカ、アジア、ヨーロッパの音楽を融合させ、フランス映画界で活躍するアルマン・アマーによる多彩な音色に乗せて、力強さの中の調和、宇宙や精神性といった目に見えないものを視覚化する。「エネルギーが重要なテーマ」と振付家のパトリック・ド・バナは言っています。

 「永遠と調和、そして平和に到達するために、我々は生と死を何度も繰り返す。生と死は永遠(時の果てまで)に互いを追い続ける。組立てる……分解するために。構築する……破壊のために。     

生きるために人は自分の内面へ深く、細く、長い道をたどっていかなければならない。道しるべ(MAKHTUB)を頼りに空を見えげ、世界を見渡し、宇宙を探索する。

そして、永遠、調和、平和に到達したとき、我々が見つめているのは……ホワイト・シャドウ(白い影)にほかならない 」(「ホワイト・シャドウ」プログラム・ノートより)

 どのような作品なのか、情報がない中であけた幕。その世界観は哲学的でありながら、圧倒的な技術力で舞うダンサーたち。マニュエル・ルグリ、パトリック・ド・バナは言うまでもありませんが、東京バレエ団の日本人ダンサーたちのレベルの高さは想像以上のもの。もともとクラシックはもとより、コンテンポラリーにおいても世界的に高い評価を得ている東京バレエ団ではありますが、それにしても世界NO.1のダンサーであるマニュエル・ルグリと対等に渡り合う存在感は圧倒的。日本人特有のコール・ドの細やかさ、調和のとれた一糸乱れぬ動きは、今回の演目の中でも見ごたえ十分でした。技術力の高さからくる舞台の完成度がとにかく素晴らしく、それに精神性の深い世界が見事に融合され、見ごたえのあるコンテンポラリーの公演でした。クラシックのように、物語性がない分、コンテンポラリーは踊るダンサーによっては、独りよがりになったり、何も伝えられないということもあります。マニュエル・ルグリを支える技術力のさらに深淵にある彼自身の世界観、カリスマ性がいかんなく発揮された公演でした。

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