沖縄ウェディング プロデュース 「Love Baile(ラブバイレ)」

本を読む。②

2011.07.02

本を読む。①につづいて…

 本を読む。①に引き続いての、著書は、ロス・キング「謎の蔵書票」。こちらは1660年、王政復古後のロンドンが舞台。1660年のロンドンと、1620年代のプラハという2つの時間軸で、40年の歳月を経て、「迷宮としての世界」という一冊の本からひも解かれる謎。書籍に関する蘊蓄をちりばめて送る歴史ミステリ。と、言われた話題の本ということで、ワクワクしながら読んだ…のですが…。読み始めは、古今の書籍、哲学や文学、宗教から様々な本の話であるとか、錬金術や暗号、迷路、薔薇十字団、ルドルフ2世、自動人形、ヘルメス文書などまるでダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチコード」のような世界観かと思ってページをめくっていったのですが…。落ちがひどすぎる(;;)ネタバレでになっちゃうので、もし読みたい方がいたらごめんなさい、という感じなのですが。一生懸命解いた謎も、暗号も、推測も、すべてはこの蔵書を探してほしいと言っていた貴夫人によって仕組まれたことで、結局探していた本は、彼女自身が持っていて、その持っている本を敵から奪われないための時間稼ぎとして主人公に本の行方を追ってもらっていた。しかも、なんだかよく分からないけれど(説明はあったけれど、よく覚えていなくて…)、彼女が住んでいる古いお屋敷が、配管が壊れたとかで洪水になり(家の中で洪水になるんです)、家に残っていた数々の貴重すぎる書籍がすべて水に流され、この肝心の本も水に流され、彼女も敵も行方不明。主人公だけが生き残って、おしまい…という…。えっ、あんだけ説いた暗号は??とか、この本はなんだったの??とか、私の中では落ちがどうしても納得できないというか(;;)。う~~~ん。という感じでした。

 ただ、当時において書籍であるとか、図書館というのは現代の感覚とは全く異なり、知識というのが一種の大きな武器であったということ、ガリレオやコペルニクスのように科学的見地と宗教的見地がずれたときに、その書物自体が大きな力を持ち、その力を抑え込むためにたくさんの血が流されたこと、という歴史の一端を感じることが出来ます。

そして最後の1冊が☆

 そして最後の1冊が、ケイト・モートン「忘れられた花園 上・下」。タイトルを見たときはそこまで惹かれるものはなかったのですが、面白かった☆☆☆オーストラリアの作家で、サンデータイムズ・ベストセラー第1位、アマゾン・ドットコム ベストブック、オーストラリアAIBA年間最優秀小説賞を受賞した本作品。

「暗くサスペンスフルで魔力に満ちた香り高い物語(…)足を踏み入れたが最後、虜になること間違いなしの傑作。≪サンデー・テレグラフ≫」「最初から最後まで、ひねりと意外性の連続。最終章まで謎に翻弄され続ける一冊。≪イヴニング・ガゼット≫」「ダフネ・デュ・モーリアの完璧なまでの継承者≪ル・フィガロ≫」「読者を現実から遠く離れた別世界に誘う壮大で豪奢な作品≪NYデイリー・ニュース≫」などなど各紙、各氏大絶賛の本著。

現代のオーストラリアに住む主人公と、その祖母、そしてその出生の謎にせまる話で、2005年の現代と、1975年の祖母の時代、1900年代のロンドンと、3代に渡る一族の物語。ここにも19世紀末から、20世紀初頭のロンドンが話の鍵を握り、その中で、話しの中心となるイライザという少女が「切り裂きジャック」遊びをするシーンなど、その当時のロンドンの風俗という点から見てもとにかく面白い作品です。なぞの解明の仕方も分かりやすく、後味もよく、夢中になって読んだら、気付いたら夜が明けていた☆という本でした!!

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本を読む。①

2011.06.30

たまたまイギリスが舞台の本を読んでました

 最近読んだ本。まずは、19世紀初頭のイギリスを舞台に、虚構と史実を緻密にからませたスザンナ・クラーク「ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」。2004年にイギリスで刊行され世界的ベストセラーになった本著。ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞、ミソピーイク賞、ローカス新人賞など多くの賞を受賞し、書評などでも、「まぎれもなく過去70年のあいだに書かれた英国ファンタジーの最高傑作だ。〈ニール・ゲイマン〉」、「ダークな神話や伝承とオースティンの極上の社会喜劇をひとつに合わせて、トル―キンにも劣らない傑作にまとめあげたキマイラ的作品。≪タイム≫」など大絶賛された。

ここからでは想像しかできない19世紀イギリスの空気感

 細部に渡って丁寧に作品の中にとりこまれた歴史的エピソードが、ときに伏線となり、ときに道案内役となって豊かな物語世界へ導いていく。まるで歴史小説を読んでいるような気分の中で、知らず知らずのうちに「魔法」「魔術」という究極の想像力の世界にすっかりとりこまれてしまうのだ。(中略)さらにこの作品に独特の味わいを与えているのが語りの妙だ。オースティンやディケンズを思わせる古風で軽妙な文体は、この時代らしさを演出し、やや冗漫にも思えるゆるやかなテンポが心地よくさえある。キャラクターの描き方もきわめてオースティン的、ディケンズ的だ。それぞれの人物の欠点や弱みをユーモラスに当てこすりつつ、それゆえの人間くささを見事に描ききだしている。(中略)全編にちりばめられた膨大な注からは、英国のもうひとつの歴史ー英国魔術史ーが圧倒的な存在感を持って立ちのぼってくる。(中略)本著は、まさしく、周到に用意された大人のための魔法の物語といえるだろう。      (訳者あとがきより抜粋)

ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル 全3巻

 このように世界中で大絶賛だった本著。イギリスの文豪の作品を読んだことがないからか、はたまたどこまでが史実で、どこからが虚構なのか歴史的事実についていけていないからなのか、イギリスのブラック・ユーモア的皮肉たっぷりな描写が肌に合わないからなのか…。気付いたら本を胸に抱いて眠ってしまっているということが何度あったことか。最後まで、本の世界観に入り込むことが出来ませんでした。19世紀初頭というのは、まだ魔術というのが生きていた時代なのか、魔術の定義が現代の私が考えるものと違っているのか、その辺からどうも難しい作品でした。最後のクライマックスは、盛り上がっていくのですが、それもイギリス的冗長な感じで、手に汗握るというよりはもっと、斜に構えた感じ。イギリスの思想であるとか、国民性が垣間見ることのできる、そうは言っても、やはり壮大なスケールで描かれた読み応えのある1冊です。でも日本人受けするのは、同じイギリスで魔法ならば、ハリー・ポッターのほうかな、とも思いました☆

こちらもイギリスを舞台にした作品

 そして、もう一冊がパトリシア・コーンウェル「切り裂きジャック」。パトリシア・コーンウェルはアメリカのミステリー作家で、ケイ・スカ―ペッタを主人公にした「検屍官」シリーズはシリーズ累計910万部を超える大ベストセラー作家。そのパトリシアが、ヴィクトリア朝末期の1880代後半に起こった切り裂きジャック事件の犯人を、現代の科学的捜査で追ったノンフィクション作品。その犯人と名指しされるのが、ヴィクトリア朝のイギリスを代表する印象派の画家「ウォルター・シッカート」。彼が遺した手がかりを、DNA鑑定やコンピュータによる画像処理、紙の分析などを駆使して、迷宮入りとなった歴史的な犯罪の犯人を追及していく。

 こちらも19世紀のイギリスが舞台で、その光化学スモッグの霧と悪臭の立ち込めるロンドンのスラム街の様子がリアルに迫ってきます。ただ、作者の思い入れがあまりにも強いためか、「ここにこんな証拠があったはずなのに警察は見過ごした」とか、「今だったらこんな捜査が出来て重要な証拠になったのに」だとか、今から100年以上前の事件を現代の技術で解明しようとするので、「そんなこと言われても当時にはなかったんだから仕方ないんじゃ…。」とか「そんなに証拠を見過ごすって警察もグルだったって考えてるの?」って邪推してしまったり。何より、作者の(彼女自身警察記者、検屍局のコンピューター・アナリストを経て作家に転身している)「私だったら捕まえられたのに…。」的な押し付けがましさが、辟易してしまう1冊でした。犯罪心理学であるとか、当時の下層社会史のような歴史の裏側の闇のヴィクトリア朝史として読むには面白い著作です。

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美言葉 15 マリオ・バルガス=リョサ「チボの狂宴」

2011.06.14

2010年ノーベル文学賞受賞

 1936年ペルー生まれで、ラテンアメリカ文学を代表する小説家であるマリオ・バルガス=リョサ。2010年のノーベル文学賞を受賞している世界的作家。

 1961年5月、北米と南米に挟まれた場所に位置するドミニカ共和国が舞台。31年に及ぶ圧政を敷いた稀代の独裁者トゥルヒーリョの身に迫る暗殺計画。恐怖政治時代からその瞬間に至るまで、さらにその後の混乱する共和国の姿を、待ち伏せる暗殺者の視点、独裁者の取り巻きたちの視点、独裁者によって排除された元腹心の娘の視点(これはしかも35年後の1996年からの回想という形をとっています)、そしてトゥルヒーリョ自身の視点など、さまざまな視点、時を隔てた二つの時代から複眼的に描き出す、500ページを超える長編です。

本書はドキュメンタリーではありません

 本作は、複雑怪奇な独裁者とその治世、時代にほんろうされる人々の人生の行方に絡め、一国家の政治、社会、民俗的歴史を考察するという難解なテーマにペルーの大文豪が挑み、独自の解釈と巧みな筆致で小説に仕立て上げた渾身の力作ということもあって、出版と同時に各紙誌が声を上げて絶賛。マリオ・バルガス=リョサの最高傑作と称えられています。本作品ではフィクションと事実(史実)が巧みに組み合わされ、作者の創作によるものと、実在の人物が混在しています。本書はドキュメンタリーではありませんが、だからこそかえって強いリアリティーをもって歴史の裏に隠された真実を語っているように思えてならないと訳者である八重樫克彦、由貴子両氏は述べています。

現代社会における文学と役割とは…

 複数の視点を用いて時間を交錯させるみごとな手法、各章の目立たぬところにある伏線的な仕掛け、現代と過去を行き来するストーリー展開など、挙げればきりがないほどのさまざまな技巧の鮮やかさが研究者の間で取り沙汰されているというのも納得の大著です。私は、このようなプロットづくりをしている作品が大好きで、日本人の作家にはあまり多くないような気がします。このような複数の視点、時空を行き来する展開が面白い日本人作家は村上春樹。でも、このような世界観で描き出す作家は、外国の作家に多い気がします。最近読んだアダム・ファウアーの「数学的にありえない」は、主人公の行動という軸と、量子力学、物理学の知識的解説という軸、作品自体の軸と、いくつかの視点から描かれていました。

小説の中で出会う…

 マリオ・バルガス=リョサがつねづね主張しているという現代社会における文学の役割。

「小説のなかで異なる文化や価値観の出会いとそこから生まれる葛藤を表現することで、読者の人間性に対する理解を深め、良識や感性を養い、現実に起こっている問題を自身の問題として受けとめられるよううながし、自分の主張のみが正しいとする狂信主義へと人々が傾くのを阻止する―それが、現代に生きる作家としてのみずからの使命である」と著者は考え、作品を通じて世界中の読者に訴えつづけているといいます。

 たしかに、今までドミニカ共和国が世界地図のどのあたりにあるかも漠然としか知りませんでしたし、このような独裁者による圧政が強いられていたと初めて知りました。それは歴史的事実であるだけではなく、そこに人間の葛藤や苦しみ、醜さ、尊厳の破壊など生身の感情がある。小説はそのような当たり前ではあるけれど忘れがちな歴史のなかの感情をまざまざと感じさせてくれます。どんな本もそうですが、100ページくらいまで読むのはプロローグで結構つらい。でも、そのくらいまでくると、小説の世界観に引き込まれ、あとはすんなりと読むことが出来ます。ぜひ手に取っていただきたい1冊です。

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