マイケル・クライトンという巨匠が残した最後の作品である「マイクロワールド」。マイケル・クライトンといえば、「ジュラシックパーク」の作者としてやTVドラマシリーズ「ER]の製作者としても知られ、ダン・ブラウン「ダ・ヴァインチコード」のストーリー展開はマイケル手法とも言われている、まさにアメリカを代表する作家です。
その偉大なる作家が2008年に死去し、その幻の遺作と言われたのが本作。作品は最後まで仕上がっておらず、アウトラインや資料をもとにリチャード・ブレストンが完成させ、日の目を浴びた作品です。
7人の大学院生が、新薬を開発するマイクロテクノロジ―会社にリクルートされ、ハワイの謎めいた研究所に招かれる。そこで、ハイテクを駆使し、わずか2センチのマイクロサイズに次元変換される装置の存在を知る。同時にこの会社の関わる犯罪を知ってしまった大学院生たちは、この装置によって体を小さくされ、ハワイの密林の中に放り込まれる。48時間以内にもとの大きさに戻らないと副作用から死を招くらしい。巨大になった虫たちや追手の暗殺者、牙をむく大自然の前で、若き科学者たちは専門知識のみを武器にジャングルからの決死の脱出を図る。といった内容です。
マイクロサイズになった小人の視点、人間サイズ(マイクロピープルからは巨人になる)の視点、そして企業の犯罪の匂いを追い続ける警察の視点と三視点から語られる本著は私の好きな分野。同作は「ガリヴァ―旅行記」を引き合いに出されることが多いとのことですが、私はあまりそことの類似性を感じることはありませんでした。
内容は全く違いますが、視点の動きや今後の展開をハラハラさせページをめくる手が否応にも早くなっていく、スピーディーに読ませていくストリーテラーとしての在り方は、どちらかというとダン・ブラウンやアダム・ファウアー「心理学的にありえない」などを彷彿とさせました。とは言ってもぢとらもマイケル・クライトンに多大なる影響を受けている作家なので当たり前と言えば当たり前ですが。
虫が好きではない私にとっては、アリやクモ、ハチやムカデと戦うシーンは鳥肌もの。絶対に同じ立場になりたくないし、発狂するだろうな…と思わずにはいられません。でも映像とは違う想像力の世界での本はやっぱり楽しいもの。読み終わって、その世界から戻ってくるのにしばし時間がかかった、お薦めの一冊です。
日が落ちるのもすっかり早くなって18時を過ぎると辺りは真っ暗…。センチメンタルでメランコリックな気持ちになる晩秋の沖縄。とは言っても今の私はそんな豊かな情感を感じている間もなく、赤ちゃんとの生活にパタパタ。そんな毎日ではありますが、出産前は「出産後はもう本を読むこともできなくなる…」とばかりに本を読み漁りましたが、人間やりたいことは結構出来てしまうようで。我が子は抱っこでしか長時間眠らないので、この子が眠っている間は良質な読書の時間となっています。
そんな私が最近読んだのは、村上春樹「日出る国の工場」や、「村上春樹の1Q84を読み解く」や、白洲正子「美しくなるにつれて若くなる」といったもの。小説は途中で分断されると読みにくくなるので、エッセイを読むことが多くなりました。
村上春樹「日出る国の工場」は村上春樹自身が日本全国の色んな工場に行って取材をしてきてそれを村上節で探訪記事にしたもの。人体模型の工場に行ったりと色んな所に行くのですが、その中で「工場としての結婚式場」というものがあります。
〈~もしあなたが結婚式場~(中略)~から何組かの新婚夫婦が順次送り出されていくプロセスをこと細かに眺める機会をお持ちになったとすれば、それを「工場」というカテゴリーの中に収めることにおそらく反対なさらないのではないかと思う。正直な話、それは工場以外の何ものでもないのだ。)
というところから工場としてみる結婚式場での津々浦々を村上春樹の妄想を交えながら展開していく内容。内容があるわけではないし、時としてくだらないともとれる内容ではありますが、それでもそんな角度からの見方もあるなとくすっと笑ってしまう、肩ひじ張らずにサラサラっと読めてしまう、秋の夜長にお薦めな一冊です!!
最近はまっているエッセイ。暮らしやインテリア、生活に関する細々としたことを題材にした書籍がこんなに多く出ていたことに驚きながら、その時その時のインスピレーションで読んでいます。
その中でもお気に入りの三冊。
まず1冊目は、光野桃「個人生活 イタリアが教えてくれた美意識」という本。「ファッションもインテリアも『自分がどう生きるか』を形にしたものである」と、イタリアで出会った10人の生活とインテリアの術から発見したそれぞれの美意識をまとめたエッセイです。写真もついていて、その世界観や、生活の仕方はもちろんアパート暮らしの私がすぐにまねできることではありませんが、それでも参考になります。
2冊目は、村上春樹「もし僕らのことばがウイスキーであったなら」というアイルランドをウイスキーというカテゴリーから切り取った旅行エッセイ。私はウイスキーどころか、お酒が飲めないのですが、でも村上春樹らしいあの独特の文体が久しぶりに読んでも気持ちいい軽く読めるエッセイでした。
そして3冊目が一番気に入った、大原照子「シンプル家事ノート ラクして気持ちよく暮らすいちばん簡単な方法」という家事や掃除、など生活を扱ったエッセイ。その中には、クローゼットの整理という中で、ファッションについても書かれていて、70歳を過ぎてもオシャレに楽しく、かっこいい生き方がそのシンプルな文体から伝わってきてとてもやる気になった本です。シンプルに生きたいなら「ものを減らして」「家事はためない」この2つですっきり、きれいな住空間がつくられるという一貫したテーマで書かれたこの本は当面の私のバイブルになりそうです☆