最近読んだ本。「食べて、祈って、恋をして 女が直面するあらゆること探求の書」は、ジュリア・ロバーツ主演で映画化された原作になります。ヒラリー・クリントンもお気に入りの一冊とあるインタビューで応えているという、世界30カ国以上で翻訳され、700万部の売り上げを記録している大ベストセラーです。
内容は、イタリア、インド、インドネシアの3カ国をめぐる1年の旅の中での、彼女自身の精神の旅を軸にしています。イタリアでは人生の喜びを、インドでは神と共にある心の静けさを、インドネシアでは人生の喜びに浸りながら心の静けさを維持するバランスを求めます。旅に出るきっかけとして、結婚生活の解消、泥沼の離婚騒動、溺れるような恋愛とその破たん、といった様々な挫折の中で、底なしの抑うつまで経験してこのままではだめになるという命がけの切羽詰まった状況がありました。
様々な場面で、泣き苦しみ、うまくいかない自分にうんざりしながらも、少しずつ昨日よりも今日、そして今日よりも明日と、一歩ずつ地道に、人生が進み始める様子は、きっと多くの女性が共感できることと思います。ただインドの場面は神に祈るという感覚が薄い日本人には少しなじみにくいような気もしました。荒れ果てた心と体を、イタリアの美食で心ゆくまでなぐさめ、インドで心の平安を得た、主人公がインドネシアでこの今の幸せを(独り身で誰にも左右されない生き方を)もう一度変えて、男性と恋に落ちるかの葛藤、その気持ちをくみ取りながら見守りつつ、彼女を愛する(決して押し付けるのでは、そばに寄り添いながら、彼女を安心させて、もう一度心を開かせる)ブラジル人のフィリペの存在。
小説と一緒に映画も見ましたが、はっきり言って映画は面白くありません。小説の本筋は追っているのですが、小説の中の主人公の深い葛藤や精神的回復はほとんど描かれず、最後のブラジル人と恋に落ちるところなんか…え~~~そんな簡単に今まで通りに恋愛して、あんなに大ゲンカしたら今まで旅で何をしてたのかわからないじゃ~~~ん、とつっこみを入れたくなる感じ。最初から最後まで、ジュリア・ロバーツは普通にきれいなので、旅に行くきっかけとなったインドネシアでの治療師に最初に会ったシーンと、再会したシーンでの「あのころは哀しそうなおばあさんみたいだったけど、今は見違えるように美しく幸せそうだ」という物語の核心の部分も特に共感できずに、不完全燃焼な印象を受けました。頭で想像していた景色を映像で見る事が出来たぐらいしか映画の良さはないかも…、映画だけ見ると内容の浅い作品のように感じるかもしれません。
小説の中には、ステキな言葉もたくさん出てきます。
遠くにある特別なことではなくて、神(ここでは宗教的な意味よりも、自分の中の答え、進むべき道と受け取りました)は自分の中にいるという意味で、
「わたしのなかにいらっしゃる神様を尊敬する」であるとか、
「しっかりと大地に足をつけることだ。そうすれば、この世にとどまることができる。だが、頭で世界を見てはいけない。頭ではなく、こころを通してものを見なさい。そうすれば、いずれ神を知ることになるだろう」 または、
「壊れた心の治し方なら知ってるわ。 ビタミンEを採る。よく眠る。水をたくさん飲む。愛した人からできるだけ遠い場所へ旅をする。瞑想する。これは運命なのだと心に教える。」 などなど。
立場やその時々の状況によって琴線にふれる言葉も違うと思いますが。現代を生きる女性の味方になってくれるような、苦しんで、みっともなくあがいているのは何も自分だけではない、抜け出すまでに遠い道のりでも、その一歩を踏み出してみよう!そう思わせる元気になれる一冊です。