根津美術館は、表参道のみゆき通りのつきあたりにある都会の中心地にある美術館。今までも名前やテレビで見たことがあったのですが、まさかこの空間が東京のど真ん中にあると思っておらず、きっと箱根とか軽井沢にある美術館なのだろうと勝手に思っていたとき。アクセス方法で、表参道、青山と見てびっくりしたのと、いつか行って見たいと思っていました。
そこで、11月23日(火)から12月23日(木)まで行われている、コレクション展「絵の中に生きる~中・近世の風俗表現」を見に行ってきました。美術館は、都会にあるというのを全く感じさせない静謐な空間で、竹林の中通路を通って行くと、真っ赤に美しく紅葉したモミジの木が出迎えてくれます。美術館の収蔵品はもちろん、そのお庭にも定評がある根津美術館。この日は、色鮮やかな紅葉が、本当に美しく、一時間があっという間に過ぎ去ってしまいました。お庭には、お茶用の邸宅もあり、日本の風流、幽玄、侘び寂びなど、美が凝縮されているような空間でした。
コレクション展も、説話画、物語絵、名所絵、都市図などその時代の様々な世界観が描かれ、時代や場所における美意識というのが感じられるものでした。この美術館は、10時から17時まで開館しているのですが、私が行ったのは15時過ぎ。展覧会を見て、お庭を見ると全然時間が足りず、一日中いても飽きることない過ごし方ができるかもしれません。東京にまた大好きな場所が一つ増えました。
上は、最近神戸の友人より送っていただいた、秋の風物詩「柿」。写真に撮るとさらに「秋」という感じがします。季節も秋から冬へと移り変わり、12月「師走」です。一日一日が本当に走り去っていくのでしょう。毎年、何が忙しいのか分かりませんが、本当に12月は走り去っていくような気がします。沖縄も今週中頃からかなり冷え込むとの予報が出ています。最近は昼間の日の出ている時間なら半袖でも過ごせるほど暖かい毎日が続いていたので、寒さが身にしみることになると思います。忘年会、パーティーなども増えてきますので、体調を崩さないように、ステキな年末を迎えたいですね。
エドガー・ドガといえば、ドガの踊り子で有名なバレリーナを多く描いた画家。そのドガ展が、9月18日(土)から12月31日(金)まで、横浜美術館で行われており、見に行った。
冷静さと機知をあわせもち、客観的な視点で近代都市パリの情景を描き残したエドガー・ドガ(1834年~1917年)。ドガは印象派展に第1回から出品し、そのグループの中心的な存在でした。しかし、屋外で光と色彩に満ちた風景画を描いた多くの印象派の画家たちとは異なり、主にアトリエの中で制作し、踊り子や馬の一瞬の動きや都市の人工的な光をテーマとして、知的で詩情あふれる世界を築きました。油彩のほか、パステル、版画、彫刻など様々な技法を研究し新しい表現を試みつると同時に、日本美術や写真など、当時紹介されたばかりの美術の要素を取り入れ、近代絵画の可能性を大きく切り開いた画家といえるでしょう。オルセー美術館の全面的な協力を得て、国内では21年ぶりとなるドガの回顧展。約120点の作品が展示されます。生涯を通じて新たな芸術の可能性に挑戦しつづけた画家ドガの、尽きぬ魅力を堪能できる展覧会。(チラシより)
ドガとゴッホは同じ時代を生きています。ドガが裕福な家庭に生まれ、80年を超える長い人生を生きたのに対し、ゴッホは常に金銭的にもひっ迫しながら、37年の短い生涯を閉じます。
私は、バレエが大好きです。なので、ドガも好きなのだろうとよく思われますが、実際はそこまで好きではありません。今回の展覧会で、実際に見てみれば新たな発見があるかも思ったのですが、残念ながらやっぱり好きではありませんでした。「一瞬の中に見る永遠の美」をドガの絵は表現しているとのことなのですが、バレエの美しさは一瞬にしかなく、それを残すことができるのはただ見た観客の頭の中だけだと思います。また、ドガの絵からは、私自身は温かさや愛情のようなものを感じず、どうしても見ていて居心地が悪くなります。このドガの代表作「エトワール」も、エトワールの背後にいる黒服の彼女を囲うパトロンの現実的な生々しい描写など、美しいものの中の醜さを感じます。この絵に関しても、中野京子「怖い絵」の中でも紹介されているので、興味がある方はぜひ読んでみてください。ゴッホの絵の中には、混乱や憔悴などマイナスの感情であっても血の通った人間の気持ちが見えてきます。でも、ドガの絵は、被写体に対する感情を感じることができません。それが、私を不安にするのだと思います。芸術の専門的なことは全く分かりません。でも、好きなものは好きだし、どんなに有名でも自分に響かないものはそういうもの。自分の感情の赴くままに、想像力で感じることができる美術館や、舞台鑑賞がやっぱり大好きです。そして、それはその時の自分の状況などでも、変わってくるので、もしかしたらいつか、このドガの奥深い良さを感じることができる日がやってくるのかもしれません。
2010年10月1日(金)から12月20日(月)まで、国立新美術館で行われている、没後120年ゴッホ展~こうして私はゴッホになった~を見に行ってきました。日本でも人気の高い画家というだけあって、平日の開館直後の10時過ぎたというのに、人、人、人…。人の頭を見に来ているかのような大賑わいでした。
1890年6月5日付けのゴッホの手紙には「ぼくは100年後の人々にも、生きているかの如く見える肖像画を描いてみたい」という言葉が遺されています。フィンセント・ファン・ゴッホは、とても有名でとても人気の高い画家ですが、生きた時間は1853年から1890年のわずか37年。しかも画家を志したのは、27歳のときで、10年足らずの時間で残された作品が今なお私たちを惹きつけてやみません。
日本でもこれまで多くの作品が紹介されてきたゴッホ。しかし、ゴッホがいかにしてそれを作り上げるに至ったかについては、これまで十分に紹介されてきたとは言えません。27歳で画家になることを志したゴッホは、同時代の画家たちやその作品から、さまざまなものを吸収し、みずからの作品に反映させてきました。本展は、ゴッホの代表作に加え、ゴッホに影響を与えた画家たちの作品、ゴッホ自身が収集した浮世絵などを展示し、「ゴッホがいかにして『ゴッホ』になったか」を明らかにするものです。日本初公開の作品を含む、ゴッホの油彩画36点、版画・素描32点、オランダ時代のゴッホに絵画表現技法の基礎を手ほどきしたハーグ派のモーヴや、パリ時代に出会ったモネ、ロートレック、ゴーギャン、スーラなどの油彩画31点、版画8点、その他資料16点のあわせて123点を展示し、ゴッホ芸術の秘密に迫ります。(チラシより抜粋)
ゴッホの色彩豊かな代表作しか知らなかった私は、初期の模索の時代の習作や、版画、暗い色の作品などを始めてみました。でも、私に絵的な専門知識がないために、やっぱり代表作のあでやかな色の配色、絵の厚みに心惹かれました。ゴッホは、死後こんなに有名になったのに、生前売れた作品はたったの1枚、精神錯乱の中で37年の短い生涯をピストル自殺で劇的に幕を下ろす。その満たされなさが、人々の心をつかむのかもしれませんが、人の幸せってなんなんだろうなと、漠然と思う展覧会でもありました。2枚目の写真で紹介した「アルルの寝室」は、中野京子「怖い絵」の何巻だったか忘れてしまいましたが、その本の中でも紹介されていた気がします。絵を実際に見た後に、もう一度読みたいなと思いました。