今年も残すところ、三週間を切り、二週間強となりました。日の落ちるのもめっきり早くなり、なんとなく慌ただしい雰囲気が街中にあふれています。でも、昔ほどクリスマスソングや、年越しの音楽が流れるのを聞くことが少なくなったような…。
沖縄は、日中はまだまだ暖かく、天気が良くないのでそんなところが冬という感じですが、道を歩いている分には、心地いい感じです。あと一週間で、一年で一番日の出ている時間が短い「冬至」がやってきます。
一年は、あっという間だった気もしますが、なんだかとっても濃密だったようにも思えて…。来年も、皆様にとって素晴らしい一年でありますように。
青い空、緑一面の芝生、歴史を情感豊かに感じさせる城壁での撮影。
写真1枚1枚に、ストーリーが感じられること。お客様一人ひとりが、撮影中の風の動いた瞬間、耳元をかすかによぎる虫の羽の音色、雲の隙間から強烈に差し込む日の光に思わず目を細めた感覚を、写真とともに思い出すということ。
フォトウェディングとは、記憶の断片を、プロにしか切り取ることのできない形で遺すということだとラブバイレは考える。
最近出会った海の写真。この日は、重苦しい雲に覆われた寒空、かろうじて雨は降っていないのですが、いつ降りだしてもおかしくないような、どんよりと湿った冷たい風が吹いているような天気。そんな中、偶然にも通りかかった初めての場所から見た、この海…。この場所は、「三天神座(みてぃんうざ)」と呼ばれる場所らしく、天と地と海のエネルギーの凝縮した力のあるスポットで、何かを始める人や、何かの要となるようなポジションの人、人生の岐路に立った時などに力をもらえる場所だそうです。
行こうと思って行ったのではなく、偶然の巡りあわせで出会うことの出来た気持ちのいい場所。
村上由佳「遥かなる水の音」も、色を感じさせる小説でした。柴田錬三郎賞、島清恋愛文学賞、中央公論文芸賞などを受賞している、人気実力を兼ね揃えた作家ですが、そこに広がる風景、登場人物の心の機微が色味を帯びて迫ってくる文体が気に入っています。
〈お願いがあるんだ。僕が死んだら、その灰をサハラにまいてくれないかな〉
という冒頭からはじまる話しで、パリで亡くなった一人の青年の遺言をかなえてあげるために、彼の姉、彼の友人のカップル、彼の同居人とが、フランス、スペイン、モロッコ、そしてサハラへと旅をする長編となっています。
その中で、亡くなった青年の姉と、フランス人の恋人との会話の中に出てくる言葉。
『いったいどこをそんなに気に入ったの』
「よくわからないけど、なんだか土地との相性がいいっていうか、自然に呼吸できるって感じなの」
『ああ、そういうことってあるよね』とアランは言った。『ねえサコ、知ってる?ゲニウス・ロキって』
「ゲニウ……?」
『ゲニウス・ロキ。ラテン語で、地霊のことをいうんだけどね。旅した先の土地にすごく惹かれるものを感じた時は、その土地のゲニウス・ロキに気に入ってもらえたってことなんだそうだよ。ほら、今のきみみたいに』 …「遥かなる水の音」より
私の出会ったあの海での出来事も、アランのいうゲニウス・ロキに気に入ってもらえたってことなのかな…、小説を読みながら、そんなことを思いました。