最後にもう一つ。
…佐伯さんは机の上に置いた自分の両手を見て、それからまたナカタさんの顔を見た。「思い出はあなたの身体を内側から温めてくれます。でもそれと同時にあなたの身体を内側から激しく切り裂いてきます」…
恋愛の究極のような言葉です。温めながら切り裂く。片思いに終わった恋、終わらせなければいけなかった恋、出会った喜びと同時に、出会ったことで忘れることが出来ずに苦しむ。特に今の季節、少し寒くなってきて、日が暮れるのも早いし、なんとなくメランコリックな、せつない、寂しい想いを感じやすい今日この頃。
もっと若い時には、こういう言葉が強すぎて、あまりにも自分にリンクしすぎてしまい、村上作品が読めなかったのかも…とも思います。
興味をお持ちになった方。ぜひ秋の夜長に読書でもいかかでしょうか。