最近はなかなか見に行く機会が少ないバレエの公演ですが、その中でも、2010年6月に鑑賞した英国ロイヤルバレエ団「うたかたの恋」から。
2010年6月19日(土)~29日(火)まで上野の東京文化会館で行われた英国ロイヤルバレエ団「リーズの結婚」「うたかたの恋」「ロミオとジュリエット」。
このときは、23年ぶりの日本での公演となる「うたかたの恋」と、シェイクスピアの国イギリスの「ロミオとジュリエット」の2演目を見に行きました。
その中でも、今まで見た公演のベスト3に入る「うたかたの恋」から。
これは、まさしく無声映画の世界。
セリフがない世界観で、ここまでの真に迫る人間の欲であったり、情愛。
ドラマティック・バレエの真髄を見た気がします。でも、生々しい性描写であったり、美しいだけでないグロテスクな心の闇であったりは、小さな子に見せるには少し…。都市部での、バレエ好きな大人のための舞台で、地方では出来ない演目だなあと思いました。
美しいクラシックバレエを見て、バレエの世界観を知った人にとっては楽しめますが、初めて見る演目ではない気がします。
「うたかたの恋」は、原題「マイヤーリング」と呼ばれ、名門ハプスブルク家の皇太子ルドルフの心中事件を題材にしています。無名の男爵令嬢であったマリーとともにマイヤーリング(地名)で突然の死を遂げたこの事件は、ドラマティックバレエの巨匠マクミランのバレエはもちろんのこと、映画「晩鐘」や小説「マイヤーリング」でも有名。その死の真相は、いまだに謎とされ、歴史のミステリーとしても、様々な説が飛び交っています。
内容のみならず、全編での10もの激しいパ・ド・ドゥ、高度な技術と、演技力が要求される難しい演目です。日本人にはなじみのない演目のため、上演回数も限られ、次にいつ見れるが分からない貴重な公演となりました。
2010年9月20日、パレット市民劇場にて、佐藤俊介ヴァイオリンリサイタル」が行われました。
クライスラー「ウィーン小行進曲」、マスネ「タイスの瞑想曲」、バルトーク「ルーマニア民族舞曲」、J.S.バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのバルティーダ第2番 ニ短調」、ラヴェル「ツィガーヌ」、フランク「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調」の6曲が演奏されました。
一言でいえば、奥深い音色の深い演奏でした。特に、ラヴェルの「ツィガーヌ」は、1924年にジプシーをコンセプトに作られた曲で、アール・デコの時代、ココ・シャネルや、バレエ・リュスの時代特有の新時代に入って来る現代音楽と、それ以前のクラシックの世界が見事に融合した楽曲でした。
この曲を初めて聞いたのですが、佐藤さんの高音から低音までの幅の広さと、音の広がりは空気を通して、生の演奏の醍醐味を存分に感じさせてくれました。
ヴァイオリンのことも、専門的なことも全く分かりませんが、彼のヴァイオリンに対するストイックさ、生き方を垣間見せてくれる素晴らしい演奏でした。
茂木健一郎が次のように言っています。
「天才とは努力の仕方を知っている人のことを言う。一日中そのことを考えていることを苦痛と感じず、それを楽しめる人。何もしないで出来る人はいないし、それを天才とは脳医学上は呼ばない。」
佐藤俊介さんの演奏はこの言葉を思い出しました。