2012年2月29日のうるう年の日に、14分遅れの19:14、東京事変「最後の生実演会」の日本武道館公演の生中継が、日本全国およびアジアの映画館で実況されました。
ラストミニアルバムのタイトルにもなった「カラーバー」から始まるライブ。それは、椎名林檎を中心に結成された東京事変の最後の大実験のような、そのような様相も呈していたように思えます。
2004年に結成された東京事変ですが、おそらくほとんどのファンが、椎名林檎のソロ時代から彼女の世界観に魅了され続けていると思います。思ってみれば、アンコールの冒頭を飾った「丸の内サディスティック」は、椎名デビューアルバムの3番目に収録されており、この曲は大学時代、当時仲の良かった先輩からいただいたのが最初だったこと…。ライブ中盤に演奏された「修羅場」は、当時お付き合いをしていた方とのお別れのとき、車の中で流れていた曲だったこと…。初めてのライブは、学生時代に女友達と一緒に行った一度と、二度目のチャンスは社会人になっており、同じ日に運悪く上司の名代で出張が入り、友人にチケットを譲ったこと…。
10代から20代を経て、30歳を超え、ここに一つの時代が終わったような。観に行くまではそんなこと少しも思わなかったのに、特に椎名林檎から、東京事変の前半の曲は、その当時の生々しい恋情を思い出す、そんな何かの区切りのようにも思える、ライブでした。
ラストの曲は「透明人間」。~また会える日を、楽しみに待ってさよなら~で終わる歌詞。椎名林檎の目は確かにうるんでいるけれど、でも一つの世界を成し遂げた人特有の達成感と一抹の寂しさをたたえながら、最高の笑顔で舞台を去るそれぞれのメンバー。
ライブの最後はエンドロールおよび、砂嵐…。最後までテレビを印象付ける演出で、最高のエンターテインメントを魅せてくれました。終演は、21:31、ここに一つのバンドの集大成が完成しました。