先週末の6月25日(土)、26日(日)に沖縄コンベンション劇場にて行われた、美輪明宏作、演出、主演の舞台「愛の賛歌」を見てきました。18時過ぎから始まって終わったのは22時。間に15分間の休憩が2回入りはしましたが、3時間半という長い舞台で、フランスを代表する国民的歌手であるエディット・ピアフの人生をつくりあげました。世界タイトルマッチを獲り、アメリカからの帰国途中に飛行機事故で最愛の人を突然失うピアフが、愛する人のためを思って想像を絶する苦しみの中舞台に立って歌う「愛の賛歌」は、第2幕のクライマックスだったのですが、号泣でした。欲を言えば、舞台転換なので仕方がないことだとは思いますが、2幕と3幕の間は休憩なしに世界観を現実に引き戻されずに引っぱっていってほしかった。3幕は、最愛の人亡き後のピアフの凋落、そして心身ともにボロボロの状態で出会い、彼との出会いがピアフに生きる希望を与える21歳年下の愛する人との人生の最期。愛する人と出会っては引き裂かれ、また出会っては…の繰り返しの中で、3幕のピアフの最期のシーンは大号泣。こんなに泣いたのは久しぶりでした;;。
美輪明宏さんの演技は、とても不思議でした。美輪さん独特のあの声で、演じているのかよく分からないくらい自然で、演劇に見られる大げさすぎて感情移入できない…ということが全くない。しかも、ピアフの人生を通しながら涙を誘うのは、私がこの出来事が自分の身に降りかかったら…と考えながら見ているから。舞台に入り込ませるというよりは、自分と舞台を美輪さんがつないでいるというか。常に自分の自我がどこかにありながら、舞台の中の人生と自分とをシンクロさせながら舞台を見ている感覚でした。これだけ涙が止まらない舞台も珍しく、美輪さんという人の持つ圧倒的なエネルギーが客席にダイレクトに伝わってきて、それは同じ空間を共有する舞台芸術でしか味わうことのできない舞台の醍醐味を存分に体感した公演でした。聞くところによると、70を超えているのだとか。それで、あの歌声、演技、ルックスは本当にすごい、あり得ないという感じでした。
舞台を見終わってふと思ったのが、エディット・ピアフとともにマリア・カラスの人生。愛する人に自分だけを愛されて、たとえ不慮の事故で先に死んでしまったとしても、また自分の死を看取ってくれて、しかもピアフ自身の遺した莫大な借金を6年がかりで返済しその返済後すぐに自動車事故で30代の若さで亡くなった最後の恋人(旦那さま)と一緒のお墓で永遠の眠りについたピアフ。最後の恋人の唯一の遺言が、「エディットと一緒のお墓に埋葬してください」というもの。死んでなお愛されていたのが分かります。一方のカラスは、愛する人を奪われ、裏切られ、失意のうちに一人さびしく死んでしまう…。そう考えると、二大歌姫の人生はどちらが幸せだったのか…もちろん幸せというのは誰かと比較するものではないけれど…と思わずにはいられません。
人は偉大な才能を天からいただく際に、何かを犠牲にしているのか…とピアフの人生にしても、カラスの人生にしても、感じてしまいます。普通に幸せで後世には忘れられるような人生と、生きている間は幸せとは言い難かったけれど後世には永遠と名を残す…。どちらの人生が良いのでしょう。そんなことも考えさせられました。
台風の影響で先島諸島のコンサートが軒並み中止になる中、本島での公演が影響なく出来たことは幸運でした。両日ともに完売だった今回の公演。S席8,400円と決して安いチケット料金ではありませんでしたが、良いものにはその価値を認めるということだと思います。また素晴らしい舞台が来ることを、そして見ることが出来ることを願っています☆