たまたま手に取った、小川洋子「博士の愛した数式」、東野圭吾「新参者」、ニコラス・スパークス「きみに読む物語」。すべて映画化、もしくはドラマ化されているものの原作の小説ですが、私は映画もドラマも残念ながら見た事がありません。その分、先入観なしに楽しむことができました。
「博士の愛した数式」は、前に読んだ「沈黙博物館」の著者である小川洋子さんの小説。前回の小説が結構内容がそこはかとなく残酷というか、気持ち悪かったので、この小説はどうだろうと恐る恐る読んだのですが…。すごく優しい気分になれる、良い小説でした。交通事故で患った脳の障害で、記憶が80分しか続かない数学博士の老人と、その家政婦の女性、そしてその女性の小学生の息子の何気ない日常を、数式という宇宙観の中で描いていく同作。私は数学なんて全く分からないけれど、読んでいく中でもしかしたらこんなにも美しい世界なのかもな、と思わせる3人をつなぐ重要なワードになっています。相手のために、何の見返りも求めず気づかい、行動する3人の姿が、それが日常の一コマであるがゆえに、かえって新鮮で気持ちのいい読後感でした。
特に前知識も何もなく読み始めたのですが、一番好きな東野作品になりました☆一人の女性の絞殺死体からはじまるのですが、東京の下町を舞台に、女性の死の真相と同時に、互いの心の少しのきっかけで絡まってしまった糸を、ひょうひょうとしながら解いていく主人公「加賀」の様子が面白く、犯人が誰なのかと同時に、下町の互いの人間模様が温かくなる、落ちも良い感じでした。
「俺はね、この仕事をしていて、いつも思うことがあるんです。人殺しなんていう残忍な事件が起きた以上は、犯人を捕まえるだけじゃなく、どうしてそんなことが起きたのかってことを徹底的に追及する必要があるってね。だってそれを突き止めておかなきゃ、またどこかで同じ過ちが繰り返される。その真相から学ぶべきことはたくさんあるはずです。…」
主人公の刑事「加賀」は、誰もが見向きもしないような些細なことに拘り、たとえ事件に無関係だとわかっていても、決して手を抜かずに真相を突き止めようとし、そのときのセリフが上の文章です。色んな事がスピーディーに進んでいく現代で、みんな目先の浅い部分だけを見て解決したように錯覚するけれど、その奥にこそ本当に見なければならないものってたくさんあると思います。でも奥まで見るのは、疲れるし時間もかかる。だから表面だけでなんとなく解決したように自分自身をも錯覚させているような…。救いがある作品で大好きです☆
きみに読む物語。アメリカの自然の中で主人公が、ものを考えたり、ぼおっとしているシーンが、自然の音やにおい、光などが自分にまで感じるようで好きです。数年前に大ヒットした映画なので、知ってる人がほとんどだと思いますが、映画を見ていなかったので、ハラハラしながら読みました。
もし気になる小説がありましたら、ぜひ読んでみてください。どれもお薦めです☆