今までは常に15センチのウェッジソールでかさ上げして魅せてきた私のおしゃれ。縦長に見せることの大事さを誰よりも何よりも分かっているからこそ、妊娠してその効用にすがれなくなった時は、目の前が真っ暗に…とまではいかなくても、あら困ったと思ったのは事実。
自分自身の身長だけで美しく魅せるにはどうしたらいいか。それが、フラットシューズで魅せるということ。
フラットシューズの醍醐味を一番実感できたのが、フルレングスのロングドレスとの好相性。今まではどんな時でもいついかなる時でも、ヒールを手放さなかったので、私の身長で地面すれすれのロングワンピースは、ヒールを履くとなんか違う…なんか…ダサい…となってしまい、結局箪笥の奥底へ。
それが、大活躍の妊婦おしゃれ。フルレングスのワンピースに、フラットシューズ、そして少しずつ丸みを帯びていく身体。これは、妊婦の究極の美しさではないかと思うほど楽しい。
体のラインを余り出さないゆったりとしたひざ下のワンピースとフラットシューズとの相性も抜群。これはもちろん、ヒールとの相性もかなり良いのだけれど、フラットシューズだと優しいというか柔らかい感じになります。女性にしか出せない柔らかみって、案外ハイヒールで出すのは難しいということに気付いた妊婦ファッション。ヒールで縦長に魅せるのは、強さやカッコよさ、ハンサムな美しさにつながるので、妊婦特有のコロンとまぁるい感じは、フラットシューズならではの美しさ。これは、可愛いというのとはどうも違う感じがします。
私にとって、妊婦は美しいという言葉の方が、可愛いよりしっくりきます。命を生み育てる責任を宿すからでしょうか。
今までと同じ環境であれば決して挑戦しなかったジャンル。それがノーヒールのフラットシューズ。新しい未知の領域に足を踏み入れるということは、必然的に新しい世界の中で新たな発見をするということ。
「たかが靴一つに」と思うかもしれない。でも、その靴一つに、面白さを感じるか、ヒールが履けなくなったストレスを永遠と思い続けて妊娠ライフを送るかでは天と地ほどの差が出てきます。
「たかが靴一つ、されど靴一つ」。フラットシューズを上手に魅せるということは、私にとって妊娠を肯定的に、新しい世界への信頼を感じる大きなきっかけとなりました。
それは、別に靴でなくても良いし、妊娠というきっかけでなくてもいいと思います。
人生の中では、どうしても環境が変化するそういうタイミングが存在します。その時に、それを前向きに上手く取り入れることが出来るか、変わりたくない、こんなのおかしい、と拒絶しながら変化を受け取るか、与えられるきっかけをどうやって自分の中で消化して昇華していくか…。
靴から随分壮大な話になってしまいましたが、一つ小さくても自信につながるということ。ヒールじゃなくても十分おしゃれは楽しめる、新しいおしゃれの視野が広がって嬉しい。その瞬間に、ストレスフリーな、どの瞬間も楽しめる自分を発見。そして、そういう穏やかさは、妊婦にこそ必要な精神状態。
赤ちゃんにとって、お母さんの心の動きはとっても重要。そして、赤ちゃんにとっても良いこと(ヒールを履かずにオシャレを楽しむ方法を見つけ出すこと)で、ストレスフリーになれるなら、こんな幸せはないのかもしれない。
フラットシューズの足元を見ながら、日々思います。(フラットシューズからはみ出た足の甲のお肉におびえつつも…)